ccob1207の日記

枕カバーみたいな人生おくってる

夏が死んだ

夏が死んだ。


私の愛する伊藤園の生オレンジティーが姿を消した。

ファミリーマートを探しても、セブンイレブンを探しても、ローソン、ミニストップ、果てはにしてつストアを探しても、恋い焦がれるその姿はなかった。

 予感はあった。奴が、いつかいなくなる。そんな気はしていた。行きつけのファミリーマートからボーリングのピンのように並んだ生オレンジティーを毎日一本ずつ連れ帰る度に、カウントダウンのようにその別れを薄っすら感じとっていた。けれど、人間だもの。現実から目を逸むけたくて、考えないようにしていた。今なら言える。許してくれ、私の怠惰を。お前を生み出したメーカーに愛のメッセージを送ることなく、お前と私を引き合わせた青いコンビニエンスストアに懇願することなく、ただただ日に日に小さくなっていった伊藤園生オレンジティー売り場の棚を唐変木の如く黙って見ているだけだったどうしようもない私どうか許してくれ。

 病める時も健やかなるときも、私の側を離れず見守っていてくれた生オレンジティー(販売開始日2019年8月25日)。

 駄目なのだ。他の奴等では。他の奴等では味の主張が強すぎる。ティーなどと謳っておきながら、ほぼオレンジ。オレンジジュースが茶の面構えをして立っているといって過言ではない。それでは駄目だ。根はしっかりと己が茶であることを自覚しつつ、爽やかにオレンジの香りを引き連れてくるお前でなくては。

 勿論、お前が万人ウケしない存在であることはよく存じ上げているとも。「大学生の居酒屋バイトがオレンジジュースを飲んだ後適当に洗ったコップに注がれた茶」「大学生がふざけて調合したままテーブルに忘れ去られたドリンク」など不名誉なレッテルを貼られていることも、やたら大学生で例えられる親和性も。けれど、やっぱり私にはお前がいなくては駄目だ。その価値に気づいたときにはもう遅い。



 愛する生オレンジティーは夏と共に死んだ。


売り場には、トイレの芳香剤をぶちまけたようなジャスミンティーがバカみたいに売り場を占拠している。